日常

記憶を辿る〔第三回〕

 

左上のバーベキュー場で声が聞こえる。大人と子供。子供会か、何かのグループか。

自分はこんな何も無いところでカシャカシャと写真を撮っているので不審に思われているだろうなとビクビクしていた。話し声が聞こえるのになぜか静かに感じる。

 

 

グランド。

入口に「使用には許可が必要」な旨が書いてあったが、ほんの少しだしちょっと失礼した。目立たぬよう木陰を歩くが、どんぐりがたくさん落ちていて歩くたびに踏みつけてバキバキと音がする。なんだこの静けさは。木々が音を吸っているのかな。もしかして、線路脇に住んでいるからか。騒々しさに慣れてしまったのかも。と今気づく。

 

頭の中で思い描くより広く感じた。

 

みんなで集まって何かをしたことより、走ったり、壁当てをしたり、素振りをしたり、一人の時間の記憶を濃く思い出す。それだけ身近な場所。隠れてタバコを吸ったり。タバコは、どう考えても自分には合わないものだったな。うまいと思ったことは、まぁ食後を除いては無かった。

 

ここで野球をする子供はいるのかな。

それにしても、コンクリートは強いなと、そんなことを思ったり。僕が生まれる前からあった壁がそのまま残っていて。当たり前かもしれないが、あ、そういえばコンクリートの耐用年数はまだ分からないんだっけ?

 

 

今、坂が無い場所に住んでいるからか、数えきれないほど見たはずの風景なのに、違和感を感じる。自分のいる場所じゃないと感じる。落ち着かない。でも、懐かしい。形のない懐かしさが湖の波みたいにゆったり押し寄せては引く。

 

本当はここでお弁当を食べようと思っていたけど、さすがに不審だろうから諦めた。一日ベンチでごろごろして夕方の写真でも撮れたらいいのに。

 

グランドを出た

 

この建物は、いつできたのかな。老人ホームの新しい建物か。
右の赤い車に人が乗っていて、電話をしていることにしばらく経ってから気付いた。

 

これは「けつ」と呼んでいた彫刻。まだ健在だ。彫刻家は子供が作品を見てどう思うか、考えたりするのかな。するのかもしれない。これは「けつ」とか呼ばれてしまうかもしれない、それもまたいい、なんてね。

 

来た道を引き返す。

 

去らばグランドよ

 

さてどちらへ行こうか

 

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