記憶を辿る〔第二回〕


森の中を抜けたところ。ああ、ここ。懐かしさと違和感。わーっと押し寄せて来るような、でも掴みどころが無いような。記憶が薄れているだけか。

どこかで聞いたが人の頭に全ての記憶は残っているらしい。忘れているように見えて、実は取り出せないだけだと云う。本当だとしたら膨大な量の記憶。本当かな?



マンションの中の道を通るか迷ったけど外を回った。一応不法侵入になるから。子供の頃は気にしなかった。



曲がっているのは電柱と道路か。あらためて大人になって見てみると、このマンションの立地はすごい。崖の下にあるんだから。山の上の団地とその先の崖下にあるマンション。あ。マンションが建つ前の記憶が一瞬蘇った。遊びに行ってたんだ。あそこに。ハッキリ映像が頭の中で再生されない…土の色が見える。なんだかボコボコしてて…



この細い道はマンションが建つ前からあった。暗くて周りが飛んでしまった(写真)。そうか、この道は不法侵入にならないから、ここを通るルートを選ぶこともできた。



日曜日の午前中だからか、静まり返ってる。テレビの音も聞こえない。天気だけはただただ良くて、自分だけが浮いているような、浮遊感。地に足がついていない感じ。



ここは、山に入る入口のような、管理者が入口まで車で行くために舗装した道だと思う。けっこう上まで舗装されてたはずだけど、この様子を見るとしばらく人は入っていなそう。小学生の頃、ここから山に入って、山中を下り、駅の辺りまで行く冒険をした。





写真を見て気付いたけど、この木、大分大きくなってる。もみの木かな。遮るものがないからまっすぐきれいに伸びてるね。



ここからの風景がどうしても見たかった。逆光でうまく写真が撮れない。できれば夕方撮りたかった。もしかしたら最後になるかもしれない。別に、今日のように来ることはできるけど、なんとなくそんな気がしてる。



いろんな事柄が交差するような、重要な場所。もちろん僕にとって。他人にはただの風景。子供の頃の記憶に囚われているのかな。見たもの。聞いたこと。聞こえた音。感じたこと。頭や体全体がスポンジみたいに物事を吸収していたんだよね、きっと。

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告